アゼルバイシャンとアルメニア
 
 先月、アゼルバイジャン行われたレスリング世界選手権でのことだが、アルメニア選手に対するアゼルバイジャン観衆の態度は異常であった。アルメニアと対戦する選手には何処の国にでも熱烈な応援をし、アルメニアが失点すると総立ちで喜び、アルメニアがポイントを取ると激しいブーイングが起こったのだった。アルメニア選手が負けると、全観衆が拍手喝采、ざまあみろ!といったような、罵声を浴びせていた。スポーツマンシップなどという雰囲気では到底なかった。

 何故これほどまでにと思って、大阪大学出身のアゼルバイジャン人、ラフマン氏に聞いてみたところ、そうかと言う両国の対立と関係が分かった。
 それによるとアゼルバイジャはイスラム教、アルメニアはキリスト教という決定的な対立の中、隣り合わせの両国は、オスマントルコ、蒙古、ロシアの強国の長い占領の中で対立してきた。
 そして今から10年ほど前のことである。アルメニアはアゼルバイジャンの領土の約20%を占領し、さらに2万人もの住民を虐殺したのだという。アゼルバイジャンはこのことは到底赦すことは出来ない。アルメニア人は皆殺しにしてやりたい、と本気で大声で叫ぶのである。
 アゼルバイジャンはカスピ海に面した歴史豊かな国であるが、古くはオスマントルコ、蒙古、そしてソ連に併合され、ソ連崩壊後やっと独立国として歩みだしたのである。現在は大量の海底油田が確認され、その埋蔵量は世界有数である。有り余るオイルマネーで近代化を進めるアゼルバイジャンが、激しい国家意識を持つのも当然と言える。

 話は変わるが、お節介な米国下院議会は、日本の慰安婦非難決議に続いて、オスマントルコ帝国のアルメニア人虐殺にまで非難する決議をした。
 戦争を背景とした事件には色々絡み合う事情がある。一方だけを見て、しかも今は何の関係もない米国議会が非難決議をするとは何事か。それなら、日本が被爆した原爆はどうなのか、ベトナムは、イラクは…、米国人は我々には全く理解の出来ない人種だ。
 
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