米満達弘のタックル

 男子レスリングが24年ぶりにオリンピックで金メダルを取った。日本レスリング協会待望の男子金メダル獲得の米満達弘選手は実に良くやってくれた。大きな期待を背負っての戦いだったが期待通りあっばれの金メダルである。まさに計算通りの着実の戦い方で強豪を次ぎ次に撃破しての完全優勝であった。

 私は米満選手の試合一部始終見たが彼のタックルには全く私には理解できない体勢からのものがあった。彼の手の長さ、身体柔らかさ、筋力の強さ、全てを駆使してのタックルは常人では出来ない粘り強さがあるのだろう。
 相手の左足に入るタックルは顔が外に出ているが長い左手で直ぐに持ち替えて胸をつける。この辺は私にも理解できるが、相手の右足に入る片足タックルは頭を中に入れて足を取る従来型の片足タックルであるが、足を取ってからが全く我々の常識からは違う。足を取って引きつけると彼は頭を外に出しあえて相手に背を向ける様な体制を取る。普通の選手ならここでタックルを切られ相手にバックを狙われてしまう。ところが米満選手はそこをチャンスとして、バックに廻ろうとして僅かに腰の浮いた瞬間を見逃さず、強靱な引きつけと手の長さで、相手を胸元に引きつけてしまう米満流の独特の体裁きである。米満は肩も柔らかいのだろうが、何よりその体制からバックを取る絶対的な自信を持っている。

 過去にこの様な選手がいたであろうか。いたいた、ソウルオリンピック48キロ級金メダリスト小林孝至選手である。小林選手も独特の人の出来ない技を持っていた。レスリングにセオリーは無い。その人その人体型にに会わせ自分のレスリングを完成させれば、世界は何時でも手の届くところにある事を米満選手は証明してくれた。


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