手の長さと脚の長さ

 外国選手は日本選手に比べ手足が長い。アジアの選手でも韓国やモンゴルの選手は日本人的体型だが、他国の選手は手脚がかなり長い。
 脚の長さは長所短所があるが、手は長い方が絶対に有利である。タックルに入った場合同じ位置に入っても手の長い方が当然相手の脚に近づくし、組みでも手の長い方が相手の首に巻き付くように組めるし、寝技では有利さが特に顕著で横崩しでは胴に深く巻き込めるし、俵返しでは手を深く差し込める為立ち上がりのタイミングが楽になる。レスリングにおいて手の長い事は決定的と言って良いぐらい有利である。
 日本選手の身体的不利を乗り越えるのはただ一つスピードである。東京オリンピックフェザー級チャンピオンの渡辺長武は身長1メートル55センチ、特に手足が短くフライ級の私よりかなり短めであった。しかしそのスピードはフライ級の選手より速く、ひねりを中心とした腕力は2ー3階級上の選手を上回った、大学新人戦ではフェザー、ライト、ウエルター、ミドルの4階級に優勝し周囲を驚かせた。
 何故、渡辺はあれほどスピードがあったのか、私の見解では身長の無い分、立ち腰だったからでは無いだろうかと思っている。タックルも投げ技も立ち腰の方がスピードは速い。渡辺は低い身長を逆に武器に変えスピードとたぐいまれな腕力、体力で手足の長い外国人をねじ伏せたのである。
 現在の日本選手は手足も長くなり筋力も欧米なみになったが、その分特徴が無くなったともいえるのではないか。ロシア、トルコと同じレスリングをしていたのでは現状ではなかなか勝てないであろう。アメリカは常にアメリカのレスリングをしてオリンピックでは必ず成果を出している。日本のレスリングはどのようなものなのか、もう一度作戦を考えてロンドンでは男子の金メダルを是非取ってほしい。


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