攻撃技としての「がぶり」

 「がぶり」の語源は分からない。たぶん上から相手「がぶっと」がぶる事から来たのだろう。
 日本のスポーツ界は上下関係の礼儀がその象徴である。特に格闘技は先輩にかける技も礼儀の対象になる。先輩には潰されるのが分かっていても頭から突っ込んで行くことが良しとされる。特に相撲は頭からぶつかることが目下の礼儀であり、我々の頃は大学の相撲部でも先輩をはたきでもすれば竹刀で叩かれたり、蹴飛ばされたりしたものである。
 考えてみればおかしな話である、技として認められている技が相手によっては使ってはいけないと言うのだから日本のスポーツ界はおかしな社会だ。
 「かぶり」も先輩にはかけては失礼な技の一つである。その為もあるのだろう、日本レスリング界では「がぶり」を技として徹底的に研究した実績はない。しかし「かぶり」はレスリングの技としては実に強烈な有効な技である。しかし大変難しく、またリスクを伴う技でもある。
 しかしそれを克服してこそ技である。「かぶり」が強烈な技である事を実感するには、まず「がぶられて」みる事である。「がぶり」の巧者に「がぶられる」と相手の全体重が首に掛かり、前にも後ろにも動けずひたすら相手の腕のクラッチを解くしかない。反撃のチャンスなどほとんど無くひたすら防戦に終始するのみである。これほどの技をどうしてもっと研究しないのだろう。私の選手時代のポイントゲットの半分以上は「がぶり」からだった、「がぶり」から発生する技は限りなく、レスリングの攻撃を大きく展開させる技である。

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