タックルだけが攻め技ではない

 レスリングにおいてポイントを取るには、タックルが一番有効であり安全な技である。しかし最近ではルールの改正もあり、タックルの内容も随分変わってきた。投げ技は国際試合でもあまり見られなくなり、攻撃は、倒す、押すに重点が置かれて、タックルそのものも変化してきた。 場外に逃がさないようにしていたタックルが、マットの場外に押し出すタックルに180度変わったのだから、選手もコーチも大変である。このルール改正をふまえて考えれば、レスリングの技も試合運びも変わって当然である。
 しかし、日本の現状は依然として旧ルールに基づく練習が中心である。まずどうしても改めなければならないものは練習場である。マットサイドが壁に近接している練習場が大半である。この様な練習場では場外を目指して激しく押し出すようなタックルは出来ない。今のレスリングの勝敗を分けるのはマットサイドである。マットサイドの攻防を常に練習しなくてはならない。その為にはマットの真ん中にラインを引いて常にマットサイドを意識した練習をすべきである。
 次にやるべき練習は30秒、15秒の途切れない練習である。途切れ無いという意味は、タックルで飛び込んで相手にがぶられたり、押さえ込まれたりして時間をロスするようなタックルはしてはいけないという意味である。体制を高くして、今までは悪いとされていた手だけで相手の足を取りに行くようなタックルを身につけるべきである。
 今のルールはあまり攻めなくとも警告点は取られない。充分に相手を研究して、計算通り試合を運べば、実力上位の選手にも勝てるチャンスがあるのが今のルールだ。タックルする事だけが攻撃ではない。全くタックルをしなくとも、攻撃は出来る。受けだけでも勝利を得ることは出来る。相手が攻め疲れて棒立ちになった時こそ絶好のチャンスである。絶対取れる体制になるまでタックルはしない。タックルをしても安全を第一に考え、手で足を取りに行くタックルでフェント程度に止めておけばよい。いなし、がぶり、手取り、足払い等は立派な攻め技である。指導者達は点取りゲームである今のレスリングのルールを充分に研究して、新しいレスリングに対応できる練習を考えなくてはならない。
 
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