モーションと筋肉強化

 吉田沙保里選手はほとんどモーション無しでタックルに入る。攻撃される相手は通常の流れでないタイミングで入ってくるタックルに何の備えもなくまともにタックルを受けてしまう。これが吉田のタックルの他の選手にはない威力だ。
 人間は身体で何かをする場合、最高の身体効果を出すために、事前にモーションを掛けて始動する。その例で一番分かりやすいのが、野球のピッチャーであり、ハンマー投げの投法である。相手があるスポーツである野球は、モーションをいろいろと工夫して、相手のタイミングを外す工夫をしている。
 レスリングもモーションで相手を翻弄し、タックルのチャンスを伺うのが通常である。レスラーは相手のモーションの中で、攻撃を予測し、自らのモーションで攻撃のチャンスも作る。しかし、何のモーションもないタックルには無防備である。特に相手を引き落とそうとした時に、そのままタックルにこられると無防備でタックル受けてしまう。
 この一瞬のタイミングはなかなか捕らえることが出来ないが、吉田は実にスムーズに何事もないようにタックルに結びつける。これは天性の勘もあるだろうが、吉田が幼年時代から親しんできたレスリング勘と、コーチである父栄勝氏の指導であろうと私は思っている。
 私は新しいトレーニング方法として、モーション無しの筋肉強化トレーニングを提唱したい。鉄アレーを振る場合、腕以外全く使わない、首を振らない、肩を振らない、身体を振らないでトレーニングする癖を付ける。足の強化もそうだ、腹筋もそうだ、鍛えたい筋肉だけを鍛えるトレーニングはそんなに簡単なものではない。しかし、それを続ければ新しい筋力がつき、新しいレスリング力備わるはずだ。

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