身体の機能に思う

 目で見た状態に反応して打ったり投げたりする野球は、全て目で決まるとまでいわれる。その中でもイチロー選手の動体視力は並はずれているという。
 ボクシングも相手のパンチが自分の顔に当たるまで見ていないと駄目だ、と友人の具志堅用高氏は言っていた。
 ゴルフも目で見た距離に合わせて打ったりパットしたりするのだから目で勝負が決すると言っても良いだろう。
 しかし、目で見ただけではどうにもならない。見た場所にバットなりグラブが反応してこその技である。反応させるのは脳であり、素早く身体を反応させるのは筋であり筋肉である。人間の身体とは実に複雑な微妙な機能の集合体である。

 ところでレスリングにおける目の役割は如何なものであろうか。私は長年レスリングをやってきたが、振り返って考えてみて、目で見て技を掛けた記憶はない。では、何時どうして技を掛けたのであろうか。あえて言えば、感じて、流れで、動きで、としか言いようがない。すなわち、レスリングの技は目で見て掛けるものではなく、技が掛かる流れを作って、感じて、掛けるものなのである。
 では、目をつぶっても同じか、と言えば、そうではない。全体のバランスと、方向感覚は目をつぶると全く狂ってしまう。目を大きく見開き、相手全体を睨んでこそ、試合の流れをつかめるのである。自分の身体なのに、スポーツマンは目の働き、脳の働き、筋肉の働きを知らな過ぎる。
 レスリングが強くなるためにも、もう一度自分の身体の機能を勉強してみる必要があるのでは無いか。

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