レスリングは健在

 私はレスリングのオリンピック復帰は90%あると思っている。スポーツの本質を知らないIOC委員も事の重大さに驚愕していると思う。プライドと小心の狭間に揺れている選考委員達は5月のロシア総会にどんな顔をして席するか今から眠れぬ日が続くことだろう。中には病気を理由に欠席を今から考えている委員もいるという。

 私は単純だから今回の様なことをしたインチキなスポーツ界の役員を糾弾してしまうだろう。いつも「まあまあ落ち着いて」となだめるのは福田富昭日本レスリング協会会長である。今までも揉め事があったとき何時も福田会長が私を戒めてくれる。「今泉さんの言う通りだよ。しかし気持ち良く怒りを爆発させる言動は良い結果をもたらさないよ。」

 今回のFILA理事会でも福田会長の「まあまあ」が殺気だった会議の雰囲気を落ち着かせたそうである。今まで友人と思っていた各国代表の激しい非難にマルティニティーは憮然として席を立ち会議場の外に出ていったという。
 福田はマルティニティーを引き戻し、興奮するFILA役員達をなだめた。そして、同行した五カ国語を話す通訳、ロシヤ系日本人ターニャ古賀氏を通じてマイクを握りしめて各国代表にこう訴えた。「我々は今何をしなければならないのか、何をすべきか、各国団結してオリンピック種目に生き残ることを考えよう。マルティニティーも今までの経験と人脈を駆使して会長としての責務を果たしてくれ」
 これで会議の雰囲気は一変した。手の付けられないほど激怒していたロシアも「福田の話を聞こう、福田頼む、皆を纏めてくれ」と穏やかな再建策を探る会議に戻った。
 マルティニティーは一票差で罷免されたという。しかし、ふてくされることも無く自らの一票は行使しなかったそうである。レスリングの為オリンピックに生き残る為、考えもしなかった事態に冷静に対応しロシアのIOC総会に向けて各国総力を挙げてオリンピック種目として生き残る事を誓い合ってFILA総会は終わった。

 
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