老人レスラーの戯れ言

 全日本マスターズ選手権の会場で笹原会長(メルボルンオリンピック金メダル)、松原元日大監督(ローマオリンピック銀メダル)、吉田義勝理事長(東京オリンピック金メダル)等と昔のレスリングの懐かしい話に花が咲いた。

 笹原会長は現在83歳。一時体調を崩したがすっかり復調して90歳になったら試合に出ると半分本気になって言っていた。
 周りにいた我々弟子達は皆70歳以上。大笑いしながら勝手にレスリングについて戯言をそれぞれしゃべり出した。
 その話の内容を要約すれば今のレスリングは1ラウンドがたったの2分である。うまく作戦を立てればどんな相手でも何とでもなるだろう。笹原時代は15分、松原、今泉時代は12分だった。今はラウンド2分。やる気さえあれば40歳ぐらいまでは全日本クラスで戦えるだろうというのが皆の結論だった。
 当然現行ルールの厳しさについても話し合ったが、押し出し技の対応、クリンチの防御の研究、取らせなければ勝ちという利点の研究。昔のチャンピオンはどんな場合でもほとんどポイントを取らせなかった。今の選手は相手に攻撃権が行った場合、反撃の一発逆転だけを狙っている。もっと粘って相手にバックを取らせても膝をつかないで30秒守りきる研究の余地はあるだろうということで老人レスラーの意見が一致した。

 私は昭和30年代の世界チャンピオン笹原正三のレスリングを見ている。笹原さんは一日の練習で1ポイントも相手に取らせなかった。膝をつくことがあっても必死に守りきって張りつめた一日の練習を終えた。クリンチで相手に攻撃権が行った場合チャンスと思えるような練習を考えて貰いたい。守りきれば点を取らなくとも勝つのだからチャンスじゃないか。
戻る