レスリングに勝つ為に

 現行のFILAルールで決勝戦まで勝ち抜くことは実に大変なことである。出場選手が何十人いようと一日で優勝者を決めてしまう厳しい戦いである。しかも準決勝と三位決定戦までの予選は15時頃までに終了させるのである。
 決勝までの勝ち抜き戦は5試合6試合は普通である。試合と試合の間隔は勝ち抜くごとに短くなり三十分、時にはそれ以下のこともある。肉体的の疲労回復は勿論であるが、精神的な集中力の回復はそれ以上に大変である。
 激戦を勝ち抜いても息を抜くまもなく次の試合の準備をしなければならない。現行ルールで勝ち上がるにはコーチの存在は大変大きなものとなっている。試合が終わった直後に次の対戦相手を選手に知らせ、相手の特徴を細かく分析し作戦を指示しなければならない。試合直後の選手は疲労と興奮で指示をほとんど理解できる状態ではない。その状態で選手を奮い立たせ作戦を納得させるのであるから大変な仕事でである。当然技云々の時間はない。選手も対戦相手を知っている場合が多いが、僅かな時間でどのように攻めるかを指示し、戦う気持ちを奮い立たせるのは並大抵の事ではない。
 私がコーチだったら相手の攻めなど考るな、自分の得意技を掛ける事だけを考え、まずは試合の指導権を握れと指示したい。現行ルールは自分の得意技を何処で出すか、2分間のどの時点で乾坤一擲の技を掛けるか、一発の技で勝敗が決してしまう大変な戦いなのである。

戻る