大学連盟の責任

 日本体育大学の学生が女性に乱暴して逮捕された。実に悪質な犯罪で警察も絶対に許せないと総力を挙げて捜査に臨み、新潟国体開催中に少年である日本体育大学1年生を逮捕した。
 その後、大学としての処分がなかなか出なかったが、やっと総長、理事長が記者会見に臨み、部長、監督の解任、部活動無期限停止という大学としての厳しい処分を発表した。
 処分の遅れたのは国体に日本体育大学関係者が多数出かけていて、教授会が開催できなかったというのが理由だが、大学としての処分の決定がいかにも遅い。この様な事件の処分は内容よりそのタイミングである。いかにも大学関係者らしいルーズな対応だと私は思っている。

 この事件に対して全国少年少女レスリング連盟会長、今泉雄策として、日本体育大学当局、そして学生連盟に厳重に抗議したい。
 大学関係者は現在のレスリング界の構成をもう一度認識して貰いたい。いまや日本のレスリングを支えているのは女子選手であり、底辺を拡大しているのは少年少女選手であることを。そして少年少女選手を育てている母親は、被害にあった女性と幾つも違わない年齢なのだということを。この事を考えればこの事件は日本体育大学の責任だけにとどまらず、大学連盟そのものの失態である。
 どの大学も総じて自分の大学の成績だけを重視し、優秀な高校生のスカウト合戦に明け暮れ、強い選手だけを優遇し、本来の大学運動部としての責務を忘れ、まだまだ教育すべき1年生の心の荒廃を招き、結果としてこの様に事件につながったのではないかと私は思っている。
 生涯消えぬ傷を心身に受けた女性には慰めの言葉もない。レスリング関係者として心からお詫び申し上げます。
 しかし、事件を起こした少年にはこんな事も考えるのです。少年は毎日の激しい練習と慣れない生活でぼろぼろになっていたのではないだろうか。悩みを癒す方法が無かったのか。先輩は、同級生は、励ましてくれる人はいなかったのだろうか。レスリングをしなければ、日本体育大学に入学しなければ、人生を台無しにしてしまった少年に哀れを感ずる私である。
 
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