トルコの英雄アイク

 トルコのアンタルヤで行われた世界格闘技フェスティバルに参加したのち、私はトルコの英雄、アイクの経営する大リゾートホテルに5日間滞在した。地中海に面した何万坪にも及ぶ広大な敷地に、松林の中に何十棟ものコテージが点在し、プライベートビーチを持ち、3つの食堂、8つのプール、野外ステージまで持つ夢のような至極のリゾートホテルである。

 私が1961年、選手としてトルコ遠征した時、アイク氏はミドル級の選手として日本の石川選手と対戦した。その後、東京オリンピックで2位、メキシコオリンピックで優勝、さらに世界選手権で3度の優勝など輝かしい戦績を残している。日本の福田会長とはマンチェスターの世界選手権で一緒に優勝した仲間であり、両者とも現在もFILAの理事として活躍している。
 「今泉、何日ここに居てもいいからゆっくりくつろいでくれ」アイク氏は全く有り難い友情を示してくれた。私は地中海の太陽と紺碧の海と心地よい風を全身に浴び、アイク自慢の快速モーターボートに乗り、落下傘で空に舞い、水上バイクで地中海を走り廻った。地中海は干満の差がほとんど無く、1年を通して日中は25度以上である。私はアイク氏のお陰で、夢のようなゆったりとした5日間をトルコの古都アンタルヤで過ごしたのである。

 「世界中にレスリングで英雄となり、大変な報奨金を手にしたレスラーは何人もいたが、たいがいは詰まらぬことに使ってしまい、実業家として成功したのは、私とソ連のサガラーゼと日本の福田ぐらいだろう」とアイク氏はカラカラと笑いながら話していた。

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