世界選手権の感想 フリー 女子

■フリースタイル
全選手、もう一度「戦うとは何か」を自問して精神を入れ替え、奮起を望む。

■女子レスリング
・伊調千春
 長いレスリングキャリアを聡明な頭脳で生かし、激戦を苦労しながらも勝ち抜き、アテネのチャンピオン、メルーニを破って世界制覇した戦いぶりは、更に北京の金メダルを手元に引き寄せたと言っていいだろう。千春は妹馨のように恵まれた才能の持ち主とは言えない自分を良く知っている。決して切れる技があるわけではないし、人並みはずれた体力があるわけでもない、しかし、勝つ為のレスリングを良く心得ている。試合は地味だが、どの様にして勝利を収めるか自分なりに計算し、決してそのペースを崩さない。実に辛抱強い、粘り強い選手である。世界を連覇で千春レスリングの完成を見た感がする。今後はポイントを相手に絶対にやらない、レスリングの完成を目指し、構え、組み、がぶりを再チェックし、無敵の構えを構築して欲しい。頼もしい限りだ。

・坂本日登美
 優勝まで何の心配もなく試合を見ることが出来た選手である。51キロ級がオリンピック種目にない為、強豪がいなかったこともあるが、その安定した戦いぶりには改めて讃辞を送る。一階級上の55キロ級に挑み、後輩吉田沙保里に惨敗し、一時は引退も考えた日登美だったが、自衛官としての責任と誇りを持って、オリンピック種目でない55キロ級に徹する姿に拍手を送りたい。かくなる上はこのクラスの10連覇を目指し邁進して貰いたい。新聞記者も賞賛していた。

・伊調馨
馨レスリングが完成されましたね。4回戦のハイヤン(中国)戦で見せた両足タックルはレスリングの形です。狙い澄まして飛び込んだ右両足タックルは、50年前に我々がレスリングをしていたときも、理想とされた両足タックルでした。幾らルールが変わっても、レスリングの本質は変わらないことを証明した、美しいタックルでした。あんな見事なタックルはそうは出来るものではありません。しかし今のルールは残酷です、見事なタックルを決めて3ポイント先行しても、2ラウンド目は0−0からスタートしなければなりません。酷な話です。実力の拮抗した対戦の場合、絵に描いたようなタックルは、そう何遍も出来るものではありません。1ラウンドの優勢を2ラウンドに持ち込めない今のルールは、強い者の方が不利になります。現に男子の場合、昨年のチャンピオンがことごとく敗れ去りました。2分間徹底的に守り、トスに掛ける戦いぶりでチャンピオンに勝った巧者がほくそ笑む試合を何度も見ました。そんなルールの中勝ち続ける日本女子の強さに改めて驚くと共に、更なる研究と努力を期待したいと思っております。
馨君、君は歴代の名チャンピオンに列ぶ選手になりました

・吉田沙保里
 別格吉田は最後になりますが、別途、人間性、技の分析、将来の展望、家族との関係、など別の欄で書きたいと思います。

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