八田式寒中水泳

 レスリングの正月合宿は八田会長の考えから始まったものです。八田会長は単なるスパルタ指導ではありませんでした。
 「正月にチャンピオンを目指す選手達が自宅に帰ってもろくな事はない。酒を飲み、美味しいものを腹一杯食べて、せっかく鍛え上げてきた身体と心を緩めて何の得にもならない。身体を癒し心を休めるのはチャンピオンになってからでよい。今はオリンピックでメダルを取ることだけを考えよ。元旦に海に入ってもレスリングは直ぐには強くはならないだろう。しかし、人が休んでいるときに鍛えればその差は大きい。人のやっていないことをする事で、自分に自信がつくのだ。君らが金メダルを取ったら、ジョニーウォッカの風呂に入れてやるからそれまで酒は飲むな。スポーツ選手が酒を飲んで良いことなど一つもない。酒を飲んで日頃のうっぷんを晴らして暴れたりしたら、全ての努力が無に帰すぞ。レスラーはジェントルマンたれ。君たちの頭脳などたかがしれている。その君たちが世界一になるチャンスがあるのだぞ。チャンピオンになれば日本中から賞賛されて、一流企業にも入れるし、到底無理だと思った彼女とも付き合えるのだぞ。君達はなぜ目の前にチャンスを掴もうのしないのか。人生に貪欲になれ。苦労をかけた父母を喜ばせろ。悪童だった君が郷土に錦を飾れ。」
 会長一流の合理的な説得力に我々選手は全てをかけてレスリングに打ち込んだものでした。

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