素晴らしい顔
 西武線で池袋に向かう電車のなか、途中でどやどやと子供達が10人ほど乗ってきた。大きな声を張り上げたり、泣き声を発したりしている。知的障害者の生徒達のようだ。私は座っていたが、目をつぶって何となく目をそらしたいような気がしていた。こうゆう場面での対応というか、態度は大変難しい。じろじろ見てもいけないようだし、知らぬ振りをしても悪いようだし、寝たふりしかないようだ。しばらくして隣に座っている子が頭をガラス窓に打ち付け出した。驚いたことに、この暴れる子をダウン症と思われる付き添った子供が、抱きしめて「駄目だよ、我慢するんだよ、」と言って優しくいたわっているではないか。私は目を見開いた。更に驚いた。この世話をしているダウン症と思われる子供は右手が無い、左手一本で 暴れる子を抱きしめ、「我慢だよ、我慢だよ。」と言ってなだめている。なんということだこの子達は。私は思わず涙ぐんでしまった。引率の先生はと見ると、なんと言うことはなく、ニコニコとしており、別に「子供達どうしいたわりあうのは当たり前でしょ。」と言う顔で手伝う風もない。健常者の方がおかしくなっているのかな。
男の先生も女の先生も30代と思われるが、穏やかな素晴らしい顔をしている。良い顔しているな、私は本心思った。目的を持ち自信を持って仕事をしている人の顔は実に良い顔をしている。俺の顔はどうかな、鏡を見るのが怖い、どんな顔だか自分が一番知っているから。
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