今年一年を振り返って

 私はブタペストの世界選手権で朝から晩までつぶさに試合を見た。女子は間違いなく世界の頂点に立っており、北京オリンピック、ロンドンオリンピックまでその実力は維持してゆくだろう。コーチングスタッフもしっかりしており気を引き締めて強化に邁進して貰いたい。
 問題は男子だ。フリー、グレコともほとんどの選手が世界の10位ぐらいには入っているのだが、そこから決勝に進出するには大きな壁がある。ブタペストの世界選手権では松永、笹本、松本の3選手は優勝してもおかしくない実力を持ちながら、激戦に力つきてしまった。今のルールは1日で各階級の決勝、表彰までを終わらせてしまう実に過酷な試合日程である。試合がつまってくると20分程で次の試合を迎える。接戦につぐ接戦で体力気力は消耗し、ちょっとしたミスでガタガタッとリズムが崩れてしまう。松本は勝てばメダルという試合で、1ラウンド目はテクニカルで勝ちながらながら、2ラウンド、3ラウンドをポイント差で失った。松永は実力的には下と思われるウズベキスタン選手に決め手を欠きズルズルと負けてしまった。笹本は指を怪我しクリンチのクラッチが組めずどうにもならなかった。
 現場にいた私はどうしても各選手を同情的に見てしまうが、日本にいる人達は男子は弱い、何をやっているのか、ということになってしまう。不運もあったが、決勝に行けないところが日本選手の実力なのだろう。この大きな壁を乗り越えるために何をすればよいのか、日本レスリング協会は男子金メダル獲得のために、全てを投入する新たな挑戦が始まるのである。
 
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