林真氏逝く

 戦後の八田一朗体制を支えた林真氏が亡くなった。堂々たる押し出しと大きな顔、「おにぎりさん」の愛称で親しまれた名副会長であった。時には八田会長に直言したり、協会の運営に大きく関わっていたが、バランス感覚に優れ、当時は早稲田OBが大半を占めていた協会内で他の大学にも配慮する手腕はなかなかだった。学徒動員で特攻隊に配属され、九死に一生を得て復員した経緯を、一緒に海外遠征に行ったおりに聞いた。太平洋戦争で出征し幸運にも生き残り復学してレスリングで活躍した人々は沢山いたが、中でも石井庄八氏(ヘルシンキオリンピック金メダリスト、中大卒)、神田幸二氏(拓大卒)、村田恒太郎氏(明大卒)等は選手として、協会役員として林真氏共に八田一朗会長を支え、戦後のレスリング協会発展に寄与された。
 林真氏は福島県の出身であるが、戦後は宮城県レスリング協会の発展に寄与され、多くの名選手を育てた。晩年は悠々たる風貌でのっしのっしと歩き、若い者にも声を気を遣い、レスリング大会には奥様を伴ってこまめにお見えになった。特に松戸市の少年レスリングクラブ創設に尽力され、その発展を大変喜んでいた。
 八田会長直参の幹部が次々に鬼籍に入り、存命なのは戸張樹一氏、猪狩則男氏、村田恒太郎氏となった。是非もう少し長生きしていただき、協会主催の百歳の誕生会を行いたいものである。
 今年の六月三日は、八田一朗会長生誕九十九年である。
 
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