レスリングの進化 |
私がレスリングの選手だったのは、昭和29年から昭和39年まである。その頃は高校からレスリングを始めるのが普通で、大学からレスリングを始めて4年間の大学生の間にチャンピオンになった人も多かった。中でも、笹原正三氏は大学から始めて4年生の時には世界チャンピオンになった。兼子隆氏は2年間で世界3位になった。花原勉氏も4年間で東京オリンピックで優勝した。その他にも数えたらきりがないほど柔道やその他の競技から転向してチャンピオンになった選手はいた。 しかし、現在は柔道からグレコに転向しても、一流になるには最低5年はかかる。何故なのだろう。指導に問題があるのか、今の選手は順応性が無いのだろうか、いずれにしても柔道からの転向組でもフリースタイルには通用しないと言われている。何故だろう。私なりに考えてみた。 結論はこうだ昭和30〜40年頃は世界のレスリングは今から比べればまだ未熟だったのではないか。例えば、ソ連の世界チャンピオンもバロワーゼ、ツルカーマニゼ、エッセンジャリなどサンボからの転向組が沢山いた。その後、オリンピックのメダル競争が激化し、メダルの大量獲得の出来るレスリング競技は各国の重点競技となった。レスリングの技は研究し尽くされ、ルールも毎年変更されその都度新しい技が研究されてきた。記録のある競技は年々記録が更新されてゆくからその進化がよく分かるが、格闘技においては全く分からず、大鵬と千代の富士と朝青龍とどちらが強いかという話になってしまう。私にしても当時の私の方が今の選手よりよっぽど強いような気がするが、よくよく考えてみると、どんな競技でも現代は飛躍的に進化しているのだ。今のレスリングは私たちがやっていた頃と比べると比較に成らないほど進化し、技か高度化していると考えるのが正しいのだろう。 ビデオによる技の分析、補助トレーニングの機器の開発、栄養学的な指導、身体のメンテナンスなど我々の時代には無かったものだ。今の選手は我々の時代より数段強く、従って他から転向してきた選手も才能があってもなかなか一流になれないのだ、そしてこれは世界共通のことなのだ。私の考えはここに至った。 |