山本姉妹ご苦労さんでした
 
 クイーンズカップの敗戦で山本姉妹のオリンピックへの夢は潰えた。ある程度予想はしていたが、2人が敗れて呆然としている様を見ると私も涙がこみ上げてきた。少年レスリングの創成期から勝ち続け、私は姉妹の負けた姿を見たことがなかった。無敵を誇り男の子も寄せ付けなかったあの強い姉妹が、力の限り戦って敗れ呆然としている様は、スポーツの格闘技の残酷さをまざまざと見せつけた。
 私が少年レスリングを立ち上げてから20年間、そのほとんどの試合で山本姉妹は勝ち続けていた。姉妹の母憲子さんは少年レスリング全国大会の初期から役員として参加し、総務、審判、会計と中心的な役割を果たしてくれた。しかし残念なことに、5年前に癌のために帰らぬ人となった。私は、母に励まされ必ずオリンピック種目になると信じ、頑張ってきた姉妹の打撃はいかばかりかと心を痛めた。母の三回忌も過ぎ姉妹はやっと立ち直ってきた。姉妹が揃ってのオリンピック出場する事を願ってきた私としては、クイーンズカップの結果は本当に残念な結果であった。日本代表になれば金メダルの可能性が十分にあっただけに返す返すも残念である。
 あれだけ頑張った姉妹が敗れた。裏を返せばそれだけ吉田が坂本が強かったと言えるのだろう。吉田沙保里の強さは単にレスリングだけではなく、人間的にも大変成長して、若くして王者の風格が出てきたようにさえ思えた。坂本真喜子も全日本の敗戦で吹っ切れたのか実によい戦いぶりで、私には次も勝ってオリンピック代表を手中に納めるように思える。山本姉妹の夢は破れたが、山本姉妹を目標として頑張ってきた2人は必ず日本に金メダルを持ち帰ってくれるだろう。山本姉妹が女子レスリングの発展に大きく貢献したことは間違いなく、私はアテネオリンピック女子レスリング金メダルの記録と共に姉妹のことを語り継いて行きたいと思っている。
 
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