スポーツ界で福田富昭みたいな男はは初めてだろう

 クイーンズカップレスリング大会のテレビ中継を見たある有名なジャーナリストが、飯でも食おうと電話をしてきた。彼は私の幼なじみで、大新聞の論説委員や編集委員を歴任、今は大学教授をしている。久しぶりにあった彼の一声は、日本のスポーツ界で福田みたいな男は初めてだな、八田一朗だって福田ほどではなかったよ。故八田一朗会長を古くから良く知る教授は、さすがの八田も福田ほどではなかったと言う。
 教授は、まず女子レスリングのスポーツとしてのすばらしさを認識したと詫びるように言った。実はアマチュアスポーツを数多く見てきた教授は、数年前まで女子のレスリングなど大したことは、と思っていたそうである。教授は柔道五段で格闘技に広い見識を持っている人であったが、女子レスリングについては軽く見ていたと詫びていた。
 先日見たクイーンズカップのテレビ中継は実に面白く、また女子選手達が魅力だったという。逞しくて、可愛くて、ちょっとした色気もあった、不謹慎な言い方かも知れないが、吉田に敗れて呆然とする、山本聖子の姿は色っぽく美しかったね。あの子は充分タレントになれる素材だね、と。「馬鹿なことを言うな」と私が怒ると、すまんすまん、と言って笑っていた。 「まあよいか、70歳にもなる爺の言うことだから」と私も笑った。
 教授は続けた「しかし福田は大した男だな。20年前に今があるのを予想したかどうかは知らないが、少なくとも遠大な福田計画が見事に実ったと言えるだろう。誰も相手にしていたかったアマチュアの女子レスリング連盟を設立し、私財を投じて練習場を作り、世界連盟に働きかけ、自費で世界中を周りレスリング外交を展開して、世界連盟の副会長になった。さらにIOC会長サマランチに直接面会し女子レスリングを正式種目にして貰いたいと働きかけ、ロゲ新IOC会長が福岡に来日したらそこまで追いかけていき、女子レスリングのオリンピック正式種目採用を訴えた。また、古橋、八木、竹田と3代のJOC会長を介してIOCに日本オリンピック委員会として、是非女子レスリングを正式種目にと正式文書を提出している。福田は大した政治家だよ。この様な形で世界を動かし、目的を達成した男は、政治家にも、学者にも、過去日本にはいなかったと思う。そういう意味では福田は嘉納治五郎、八田一朗以上だろう。
 教授は熱っぽく話し続けた。
 
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