世界選手権の男子フリーチーム団長としてブリガリア・ソフィアに行ってきたわけですが、惨敗の責任を取って頭をボーズにして、ご報告いたします。 世界は強かった、これが私の偽らざる感想です。なにを今更とお思いでしょうが、私なりに取材し、理解した感想を報告します。ソ連の崩壊で、15の国に分裂し、更に他国へ移民し、思いも寄らぬ国から、旧ソ連選手が代表として参加してくることにより、世界のレベルが飛躍的に上がり、全ての試合が全日本選手権決勝以上の実力です。この選手の中での予選リーグ2勝は並大抵ではありません。では、なぜ世界のレスリングは、この様な状態になったのか、といえば世界各国のオリンピックにおける、レスリング競技の評価が非常に高いということがあるのです。というのは、オリクピック最古の種目であるレスリングは、IOCにおいて16個の金メダルが、銀・銅も入れれば48個のメダルが認められております。さらにアテネでは女子の12個が増え、合計メダル54個(男子は計2階級削減)になります。つまり、世界各国がオリンピック政策を考えるとき、最も多くメダルを、安価な強化資金で獲得できる競技がレスリングなのです。 サッカーで金メダルを取ることは、小都市の年間予算が必要だ、とスロバキアのコーチは言っておりました。そうした考えでレスリングの強化を目指すのですから、移民の受け入れを始めコーチの招聘等々、日本には考えられない政策が採られます。現にカナダの今回のチャンピオンはグルジアからの移民です。イギリスには世界各国に対し旧ソ連の選手、コーチを斡旋する会社があり、現に日本に対しても、コーチ派遣の打診がありました。そうした世界情勢の中で日本はいかにしてオリンピックでメダルを獲得するのか、これは単に強化委員会だけの問題ではありません。 レスリング協会あげて取り組まなくてはならないでしょう。すでに、オリンピックだけではなく、世界選手権もセレクションが行われる現状では、否応なしに世界を狙う階級が限定されてきます。従って可能性のある階級だけを強化することになるでしょう。極端に言えば、女子だけなどという状態も起こり得ます。勿論この考えは、オリンピックを狙うというだけの考えですが。しかし国内の学生大会なども、日本レスリングがオリンピックや世界選手権に出られないのでしたら、発展はないでしょう。 まだアテネには間に合います。幸いなことに女子がオリンピック正式種目になったので、JOC強化指定は特Aとなるでしょう。男子は8位日入賞がなかったのですからCかも知れません。Dより下はないのですから大変です。しかし男子も間違いなくチャンスはあります。その可能性を確実につかむ、強化策をレスリング協会あげて作り上げることが急務です。 かつては強かった、なぜ弱くなったか、などの不毛な議論はやめて、世界で勝てる可能性の追求を考えて行きましょう。男子レスリングはこのままでは、JOCからも相手にされない競技になってしまうことを関係者全員が自覚して、強化策を構築してゆきましょう。 |