新しいレスリングの練習法の提案
 
 日本の格闘技の練習方法「乱取り、申し合い」は決められた時間で次々に相手を替えて行う。相撲も柔道も剣道も同じである。レスリングもスパーリングは相手を替えて3回−5回とする。我々の頃は10分のスパーリングを10回もやった猛者がいた。この練習方法は50年間以上何の疑問もなく今も続いている。この練習方法をすこし替えては、と私は提案する。 米国の練習はその日決めた相手とだけ一日中スパーリングをする方法が主流だ。
 
<新しい練習方法の提案>
練習開始前にA君とB君とのペアーを決める。これはその日その日によって相手を替えればよいが、当初は組み合わせは指導者が指名して決めるようにしてもよい。出来れば始めは気の合った同士組み合わせるとよい。慣れてきたらライバルや、苦手の選手等との組み合わせも必要だ。同じ相手と一日中スパリングをする。おそらく選手達は初めての体験で とまどってしまうだらう。では今泉流新練習方法を書く。

1.出来上がったペアーは準備体操の後、まず寝技の掛け合いから練習に入る。5分から7分の力で技を掛けあって正確に技が決まっているかどうか、ポイントを外していないか、を相手と確認しながら正確な技を掛ける練習をする。時には腕を、首を、腰を、お互い攻め合っててストレッチ運動をする。

2.汗が出て出来たら立ち技に入る。打ち込み、これは受けが一番肝心、相手の得意技、くせを理解して、ただ技を掛けさせるだけでなく、訓練になるように相手に会わせて、右組になったり左組になったりして動くことが肝心。

3.相手に片足を完全に取らせてから、全力で抵抗して逃れる練習をする。攻める方は完全にコントロールしてからなのだから、逃げられるようでは駄目だ。この練習を交互に五回もすれば完全に息が上がりスパーリング以上の練習量がある。

3.一息ついて、スパーリングを10分間行う。真剣にお互い何ポイント取ったかをカウントしながら全力で練習する。技をかけて完全にポイントを取ったか否かを自分で確認することは大変重要な練習である。

4.スパーリングが終わったらお互い技を検討、批評し相手の意見を聞きながら、呼吸を整える。

5.再びスパーリングを10分間する。立ち技だけを中心に、前に掛けなかった技、自信のない技でも積極的に掛けるよう心がける。技を失敗してもお互い深追いせず立ち技に戻る。

6.完全に20分間休憩を取る、水の補給その他 スパーリングを更に続けてもよい。
7.寝技の練習をする。守る方は単に相手に攻めさせて頑張るだけではなく、反撃し立つ訓練をする。2分で交代し2回〜5回寝技をする。10分休憩。

8.横崩しの練習を交互に数回する。俵返しの持ち上げ技を数回交互に行う。この練習はお互い全力でする。終わった後、持ち上げ技を左右10回づつする。この場合受ける方は50%ぐらいの力で受ける。

9.腹筋、腕立て伏せ、柔軟体操、をお互い協力して行う。

10.整理体操をしながらお互いの技について研究しながら一日の練習を終わる。この間2時間。

<この練習方法の利点>
・練習の全てが強制されることなく選手の意志で行われる。
・自発的に練習をする気持ちを引き出す。
・レスリングはやる気のない練習をしてもあまり効果はない。
・先輩が後輩をしごくといった練習は無くなる。
・今は何ポイント取っているのか、取られているのかを計算しながらスパーリングをすることは重要である。当然勝ているときの技、負けているときの技、の研究も出来る。
・成功した技、失敗した技、互い検討して研究することが出来る。
・練習は辛いばかりではなく、楽しむ部分を選手に作ってやるのも指導者の仕事だ。

レスリングは試合時間が大幅に短くなり、ゲットポイントも大きく変わった。しかし練習方法が 昔の12分の時と同じではおかしい、と考えなくては、と思うのだが・・・・。

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