八田会長と市川房枝参議院議員
−女子レスリングの予言−
 
 天皇杯全日本選手権を大会委員長として無事終え、ほっとしております。天皇杯は、女子選手として初めて山本聖子選手が授与されました。改めて女子選手の躍進を感じるとともに、30年前に八田会長が言っていた「必ず女子がレスリングをやる時代が来る」という言葉を思い出します。

 昭和45年頃、参議院議員だった八田会長は、いつもの八田流の言い回しで 女性を軽視したような発言をし、あの有名な二院クラブの市川房枝議員の抗議を受けたのです。八田会長の部屋に訪ねてきた市川議員は、「八田さん、私はかねがね八田さんは、自民党の中では率直でなかなか良いと思っていたのですよ。それがなんですか、あの発言は、私は女じゃないですと。」と足を組み、たばこを深く吸い込み、勢い良く煙を吹き出しました。その迫力はすごいもので、側にいた私たちも、直立するほどでした。八田会長はすっくと立ち上がり、「先生申し訳有りません。決して本意ではありません。今後言動には気をつけます。」と青年のように謝りました。市川先生は、「八田さん。その率直さが良いですね。たとえ演技でも女心をくすぐりますね。」と柔らかな眼差しで、八田会長に見やりました。その後は和やかな話合いをしばらくして、市川先生は立ち上がりました。
 八田会長は突然、「市川先生、私はレスリングの八田です。そのレスリングの八田が思うに、格闘技は、男性よりむしろ女性に向いていると思っております。必ず女性があらゆる格闘競技をする時代が来ます。そうしたら是非先生、女子レスリングの会長になって下さい。」と言いますと、「また八田さんは、そういう人を茶化したようなことを言う。」と市川先生は怒ったような顔をしましたが、ついてきた秘書と顔を見合わせて、「この人にはかなわないね。」と言って、後は無言で帰っていきました。

 市川房枝議員の帰った後八田会長は「君はどう思う」と私に尋ねましたが、わたしは、「はぁ」と生返事をしましたが、女性がレスリングをするなど、見せ物じゃないのだから、と内心思っておりました。八田会長は「女性の持っているねばり強さ、攻撃精神はむしろ男性を上回っており、精神的には男性より格闘技に向いている、肉体的な問題も、女性同士が戦うのだから問題はない。必ず女性がレスリングをする時代が来る。」と30数年前に予言しておりました。
 福田富昭専務理事も20年前、同じような考えで、誰も手を貸さなかった女子レスリングを立ち上げ、身銭を切ってまでして立派な金メダル候補の競技に仕立て上げました。

 先見性とは、物事を冷静に分析し、将来を予測し、それを実行してこそとつくづく感じております。

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