八田会長の俳句4
 
 前にも書いたが、八田会長は高浜虚子の次男友次郎君の同級生であり、虚子は“悪ガキ”八田一朗をいたく可愛がった。虚子は八田会長が出版した句集『俳気』序文の中で、「八田一朗君は、私の次男池内友次郎と、鎌倉師範付属小学校に通っていた。(中略) 乱暴者の一朗君は、なにかが癪に障ったといってといって郵便ポストを引き抜いて川に捨ててしまったこともあった。また升富といふ酒屋の店先にある酒樽の栓を抜き放しにしたという話も聞いたことがある。全く手のつけられないいたずら者だが、次男の友次郎とは大変仲がよかった。中学も開成で一緒だったが、けんかがもとで、退学になったそうだ。その後友次郎(後芸大教授)はパリに十年ほど暮らしたが、一朗君はたびたび友次郎のもとに現れたそうだ。(中略) 君の作る句は少しも気取るとこなく、天真爛漫、平凡率直であって、愛すべきものである。読んでいてただ愉快。」と書いている。

昭和14年に、野砲兵第一中隊主計少尉として召集された時の句

 出征の兵等に桜吹雪きつつ

 春雨や馬の毛並みのやはらかく

 隊長の更衣して若かりし

 踏み荒らし露営の跡の百合の花

 秋の雲東に流れ機は西に

 秋晴れて弾道はるか見えにけり

 耕牛に子供のせたる家路かな

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